建物等の解体工事では、粉じん飛散防止のため、作業区画を防音シートで隔離します。
アスベストが飛散する可能性がある場合は、防音パネルやプラスチックシートで隔離の気密性を高めます。
閉ざれた空間で、長袖、長ズボン、保護衣、ヘルメット、呼吸保護具を装着して作業に従事します。
アスベスト含有仕上塗材の除去の超高圧水洗工法の作業従事者は専用の防護服も着用します。
昨年の夏、アスベストの追加調査で、仕上塗材を超高圧水洗工法で除去している現場に、昼休みの時間を狙って入りました。
右下の写真の黒っぽい部分が、超高圧水洗工法で仕上塗材を剥がした部分です。左は内装材を除去した部屋の様子です。
高温多湿の過酷な労働環境下の安全衛生に配慮した工事には作業従事者の忍耐力と工期の追加が必要です。
今、工事現場の熱中症対策が注目されています。このような過酷な解体工事の現場に冷房装置が入る日が待たれます。


2025.4.17 大阪市北区天満1-7-23 で有機溶剤を使うアスベストの除去作業をしていた32歳の女性が死亡し、男性2人が重傷を追いました。
粉じんの発生量の少ない工法、高コスパの工法として剥離剤を用いる工法が選定されたと思われます。
気密性の高い作業区域を作り、粉じんの発生量の少ない剥離剤を用いる工法を選択して、
住民をアスベストから守った工事会社が作業員の命を有機溶剤中毒から守れなかった悲しい事件です。
テレビで解説した専門家によると「おかしいと感じたら退避することが大切」とのこと。
元請や現場管理者の不行き届きがある前提で、最後の砦は自己防衛です。
アスベスト調査結果と現場が異なることを前提に自己防衛することも大切です。
例えば、削孔する石綿なしと判定された天井材の下に、見落とした石綿含有の天井材があるかも知れません。
また、石綿なしと判定して良いとされる2006年以降に着工した建物であっても、
施工者の無邪気や節約で、未使用の古い石綿含有建材が使われている可能性がゼロとは言えません。
厚生労働省・環境省の「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び 石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」に剥離剤を用いる工法の注意事項の記載があります。
(5)処理工法ごとの留意事項
2)剥離剤を用いる工法
・仕上塗材の種類によっては、剥離剤の剥離効果が期待できない場合がある。一般的に、無機系材料が結合材となっている仕上塗材を剥離剤によって軟化させることは難しい。そのため、剥離剤を用いる工法を選択する場合は、必ず事前に試験施工を実施して次のことを確認する。
✓ 剥離剤の有効性(仕上塗材等の構成層(上塗材、主材)のどの部分を軟化して完全に除去できるか)
✓ 剥離剤の使用量、除去開始までのオープンタイム(周辺温度によって異なる。また、揮発を防ぐ目的で
剥離剤塗付壁面にシートをかぶせることは有効である。)
✓ 有機溶剤中毒等のおそれ(換気、防毒マスク着用の検討)
✓ 臭気の影響
✓ 作業性など
・ 剥離剤併用手工具ケレン工法の場合、剥離剤を塗布後の放置時間を間違えると、表層だけ剥離し、結果としてケレンで掻き落とす際に石綿含有層の湿潤化が不十分になることに注意が必要。
・建築物の壁面改修等で既存の石綿含有仕上塗材が除去されずに、何層にも上塗りされている事例がある。
このような場合は、完全に軟化することが困難な場合があるので注意が必要。
・ 除去後に微細な凹凸下地等に軟化した仕上塗材が残らないように注意が必要。
・ 剥離剤を使用するにあたっては、ジクロロメタン等の有害性の高い化学物質を使用しないよう、剥離剤の選択にも十分留意する必要がある。詳細は下記「(7)粉じん・有機溶剤のばく露防止措置」を参照。
(7)粉じん・有機溶剤のばく露防止措置
作業の難易度や選択した除去工法に応じて、必要な作業員の呼吸用保護具、保護衣などを使用する。
剥離剤工法の場合、石綿だけでなく有機溶剤のばく露防止措置を行う必要がある。
剥離剤に用いられている溶剤としては、ジクロロメタン等、特定化学物質障害予防規則(昭和47 年労働省令第39 号)や有機溶剤中毒予防規則(昭和47 年労働省令第36 号)による規制の対象となっている物質のほか、ベンジルアルコール等指定外の有害物質が含まれていることがあり、これまでに火災や中毒、化学やけどなどの事案が発生している。
なお、ジクロロメタンを1%以上含有した剥離剤を使用する際は、特定化学物質障害予防規則に基づき特定化学物質作業主任者の選任等の対応が必要となる。
剥離剤の選定にあたってはSDS(安全データシート)に記載されている事項を確認し、必要なばく露防止措置を行うこと。
また、剥離剤を使用する作業における労働災害防止については、「剥離剤を使用した塗材の剥離作業における労働災害防止について(令和2 年8 月17 日付け基安化発0817 第1 号、最終改正令和4年5月18 日付け基安化発0518 第1号)」が参考になる。
化学物質を含有する剥離剤等を使用する場合は、4.12.6 に示す安全衛生対策にも留意する。
4.12.6 その他の安全衛生対策
その他の安全衛生対策として以下の点にも留意して作業を行う。
(1)特定化学物質障害予防規則や安衛法に基づくリスクアセスメント等関係法令を遵守するなど、化学物質である剥離剤等による健康障害や危険を防止する。
①化学物質リスクアセスメントの実施
②リスク低減措置の作業員への周知
③リスクアセスメントの結果及び安全情報シート(SDS)の作業場等への掲示もしくは備え付け
(2)平成23 年5月23 日付け基安安発0523 第1号「高圧洗浄作業における安全対策マニュアル」に示す内容にも留意し、高圧洗浄作業における危険を防止する。